倉庫建築の素材に木材を使うことは、脱炭素社会の実現に向けて注目を集める手法です。二酸化炭素を吸収するなどの、木材の性質をうまく使うことで、持続可能な環境に大きく貢献できます。この記事では、脱炭素社会における木造倉庫建築の魅力と、可能性について詳しく解説していきます。
木造建築が脱炭素社会で注目される理由とは
木造建築は、柱や梁などの構造部分に木材を使用する工法です。木材を使うことは日本の伝統的な工法であるため「在来工法」と呼ばれています。脱炭素化やサステナビリティ、SDGsが叫ばれる現代において、木造建築が注目を集めています。政府はさまざまな法律を施行・改正し、木材の利用促進を図っているほどです。
しかし、山や森にある樹木を切り倒すことで、大気中の二酸化炭素を増やしてしまうのではと考えられますが、なぜ木造建築が脱炭素社会で注目されているのでしょうか。
注目されている理由のひとつは、木材が二酸化炭素を吸収し、閉じ込める能力を持っていることです。森や山に生えている樹木は、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの二酸化炭素を吸収し、貯蔵します。この貯蔵された二酸化炭素は、樹木が燃やされない限り大気中に放出されることはありません。
ただし、樹木の成長が進むと吸収量が減少するため、樹木を伐採しないことが地球温暖化を抑制し続ける、というわけではないのです。成長しきった樹木は伐採すると同時に新しく植樹し、若い樹木に多くの二酸化炭素を吸収させるといった、積極的な二酸化炭素吸収サイクルの構築が必要です。そのため、国内の樹木を活用することは、脱炭素社会の実現に向けて重要で、注目されています。
日本では、農林水産省に所属する林野庁が木材利用の促進施策を行っており、木造建築の普及や木材の持続的な利用を推進しています。木造建築は、再生可能な資源である木材を活用し、二酸化炭素の吸収と貯蔵を促進する手法であるため、脱炭素社会への貢献が期待されているのです。
倉庫建築における木造の利点と可能性
木造倉庫建築には、さまざまな利点と可能性があります。
まず、木材の性質に注目してみましょう。木材は軽くて強度があり、地震などの揺れに強い建材です。また、燃えると炭化層ができ、それ以上の燃焼を防ぎます。炭化層は木材の強度を保つ特性があり、実は鉄材よりも燃えたときの強度を維持しやすいのです。
木造建築は建築時の炭素の排出量が比較的少ないというメリットもあります。鉄筋などの建材は、製造時に高温で溶かして成形する工程が必要で、熱するために多くの燃料を要します。
一方で、木材は自然素材であり、他の建材と比べて製造過程における炭素排出量が少ないため、環境に優しい選択です。さらに、木材は日本の多湿な気候に適しています。木材は湿度が低い時には水分を吐き出し、高い時には吸収する調湿効果があります。断熱性も鉄やコンクリートよりも高く、エアコンなどの電力消費を削減できることで燃料の節約が可能です。
近年は木材技術の進歩も目覚ましく、耐震性や強度を高めるための特殊な集積材や、耐火性を高めるための石膏部材の組み込みなど、さまざまな技術開発が行われています。今後も木造建築の進化と可能性が期待されています。
木の温もりが織りなす木造倉庫のメリットとポイント
素材に気を遣った木造倉庫建築には、さまざまなメリットがあります。
まず、木材の軽さと強さが活かせることです。重量のある倉庫を建てるには不適な弱い土地でも、倉庫を建設することが可能です。木材の重量比強度は大変優れており、地盤の弱い場所でも安定した倉庫を構築することが期待できます。
また、木造倉庫は湿度の管理がしやすく、保管物の品質を維持するのに適しています。木材には湿度を吐き出したり吸収したりする調湿効果があるため、湿度に敏感な物質を保管するときに、変質のリスクが少ないことが大きなメリットです。
さらに、断熱性能が高いため、倉庫内の温度変化を抑えられます。冬季には倉庫内が冷え込みにくく、夏季には熱くなりにくい特性があるため、温度変化に敏感な物質の保管にも適しているのです。倉庫内で作業する従業員に対しても、快適な作業環境が与えられるでしょう。
木造倉庫を活かすためには、これらのメリットをしっかりと把握することが重要です。木の特性を活かし、倉庫の設計に活用することで、効果的な保管環境を実現できるでしょう。
まとめ
木造倉庫建築は、脱炭素社会に向けて注目される魅力と可能性を秘めています。木材は二酸化炭素の吸収に大きく貢献します。樹木の成長に合わせて伐採、植樹する二酸化炭素吸収サイクルを構築することが重要です。他にも、重量比強度の高さ、製材や建築工程でのエネルギー消費が少ないこと、エネルギー消費の削減効果、調湿効果などが木造倉庫のメリットです。
木造の利点を活かして設計することで、倉庫の設置場所を選ばず、さまざまな保管物を適切に管理できるでしょう。木造倉庫は、環境保護効果と高い保管性能の両面で優れた選択肢です。その魅力と可能性により、脱炭素社会の実現に向けて注目されているのです。